過去記憶の扱い方

今日は、心についてのお話を。
心理療法では、その方の過去記憶をさかのぼり、そこで起こったことや、感じたことを扱うことがあります。
現在のその人の心の反応の仕方や考え方のパターンは、過去の経験に基づいて学習され形成されてきたもの。
ですから、過去、特に幼少期の記憶にさかのぼって、その時に何を体験し、何を感じたかをつぶさに見ていき、今の自分の認知・行動の傾向を紐解いていくこともあります。
しかし一方で、現在の状況を改善していくために、必ず過去を遡らなければならないかというと、そういうわけでもありません。
例えば、深く傷ついた過去の出来事に今も苦しんでいる場合。
その出来事が苦しい原因だからといって、その記憶を扱った場合、扱い方によっては傷口を広げてしまい、余計に辛くなってしまうこともあります。
それは例えるなら、刺さったトゲを下手に抜こうとして、余計にその部分を傷つけてしまうことと似ていて、本来なら改善のためにやったことが、かえって状態の悪化を招いてしまうこともあるのです。
そうでなくとも、傷ついた過去記憶を直視することは、その人にとって、とても大きなエネルギーを要するもの。
では、そのようなとき、どうしたらいいのでしょうか。
このような時に大切にしたいのは、まずは“今”です。
過去の記憶によって辛い思いをしていたとしても、そのつらい思いは過去ではなく、“今”生じているのです。
現在の心理状態が良くなると、その記憶としっかりと対峙する勇気が出てきたり、また、興味深いことには心が元気になっていくと、辛かった過去の記憶がそれほど気にならなくなったり、その記憶に対する印象が変化していったりもします。
そしてもうひとつ。
からだに自然治癒力があるように、心にも自浄作用があります。
つまり、心にエネルギーが満ちると、自ずと握りしめていたこだわりの手放しのプロセスと対峙したり、過去記憶が浄化されるようなプロセスに入ったりしていくのです。
先ほどのトゲの例で言うと、トゲが刺さったとしても無理に抜こうとせず、現在の自分のコンディションをよくしていくことにフォーカスしていると、自ずとそのトゲは、ベストなタイミングで負担の少ない形で抜けていくイメージと近いものがあります。
これは、いろんな方を見ていて本当に面白く、興味深いなぁと感じています。
わたし自身はいつも、できるだけその方が消耗が少なく後戻りしにくい形で、その方が向かう方向をブレることなく伴走しながら、着実に楽になっていくお手伝いができればと思ってかかわらせていただいています。
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